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「答えを教えないAI」を教室に1つ置く。──子どもの「もう一回考える」を支えるGem

9月24日
読了時間: 11分

はじめに

「先生、どうしたらいい?」

授業をしていると、子どもからこんな言葉をかけられることがあります。

体育で思うように動けないとき。作文がうまく書けないとき。問題の解き方が分からなくなったとき。

そんなとき、子どもは先生に聞きにきます。

もちろん、それは大切なことです。

でも、ふと考えることがあります。

「困ったときに相談できる相手は、先生だけでいいのだろうか?」

友達に聞く方法もあります。

教科書を読み返す方法もあります。

自分でもう一度考えてみる方法もあります。

そして、これからの教室では、そこに「AIに聞いてみる」という選択肢が加わってもいいのではないでしょうか。

ただし、私は一つだけこだわりたいことがあります。

AIに答えを出してもらうことを、学びのゴールにはしたくない。

むしろ、AIと話したことで、

「じゃあ、もう一回考えてみよう」

と思える。

そんな使い方を目指したいと考えました。

そこで今回、子どもが困ったときに「答え」ではなく「考えるきっかけ」を返してくれるGemを作ってみることにしました。

9月からの実践に向けて、少しずつ準備を進めています。



目次

  • 「答えを教えてくれるAI」に違和感を持った理由

  • AIを「相談相手の一人」にしてみる

  • 答えではなく、問いを返すGem

  • まずは自分で作って、実際に試してみた

  • 子どもに使わせる前に伝えたいこと

  • AIに任せるのではなく、自分で判断する

  • 体育の授業から、小さく始める

  • 完璧なAIを目指さない

  • 先生の役割は「答えること」だけではない

  • まとめ



「答えを教えてくれるAI」に違和感を持った理由

これまで私は、Geminiを使って授業に使えるものをいろいろ作ってきました。

授業をちょっと便利にするもの。

子どもの振り返りを整理するもの。

先生の仕事を助けてくれるもの。

AIを使って何かを作るたびに、

「これは授業で使えそうだな」

「こんなこともできるんだ」

と、新しい発見がありました。

ところが、あるとき少し違う方向からAIを見てみたくなりました。

「先生がAIを使う」のではなく、「子どもが学びの中でAIを使ったらどうなるんだろう?」

そう考えたのです。


ここで、すぐに便利な使い方を考えることもできました。

分からない問題を聞けば、AIが説明してくれる。

文章を入力すれば、改善案を出してくれる。

質問すれば、すぐに答えてくれる。

たしかに便利です。

でも、それだけでいいのでしょうか。

子どもが「分からない」と思った瞬間にAIへ質問し、答えを受け取る。

それを繰り返していったら、子ども自身が考える時間はどうなるでしょう。

私は、そこに少し立ち止まって考える必要があると思いました。



AIを「相談相手の一人」にしてみる

そこで考えたのが、AIの立ち位置を変えることでした。

AIを「先生の代わり」にするのではありません。

子どもが困ったときに相談できる相手の一人にする。

例えば、

① まず自分で考える

② 友達に相談する

③ 先生に聞く

④ 教科書や資料を調べる

⑤ AIに相談してみる

こんなふうに、いくつかある選択肢の一つとしてAIを置いてみるのです。


「困ったらAIに聞きなさい」ではありません。

「AIという方法もあるよ」と伝える。

この違いは、意外と大きいのではないでしょうか。

あなたのクラスでは、子どもが困ったとき、どんな方法で解決することが多いでしょうか?

先生に質問する子もいれば、友達に聞く子もいるでしょう。

一人でじっくり考える子もいるかもしれません。

そこにAIが加わったら、子どもたちの「学び方の選択肢」はどう変わるのか。

私は、そこを見てみたいと思いました。



答えではなく、問いを返すGem

今回作ろうとしているGemには、明確な方向性があります。

それは、

「すぐに答えを教えない」

ということです。

例えば、体育の授業で子どもが、

「うまくできません。どうしたらいいですか?」

と相談したとします。

一般的なAIなら、

「○○を意識するといいですよ」

「○○の練習をしてみましょう」

という答えを返すかもしれません。

もちろん、それが悪いわけではありません。

ただ、今回作りたいGemは、少し違います。

例えば、

「どの部分が一番難しいと感じていますか?」

「うまくできたときは、何が違っていましたか?」

「友達の動きと比べると、どこが違いますか?」

「自分では、どこを変えてみたいですか?」

そんな問いを返します。

ここで大切なのは、AIが「正解を持っている存在」にならないことです。

子どもがAIとのやり取りを通して、

「そうか、自分はここで困っていたんだ」

「じゃあ、こうしてみようかな」

と、自分の考えに戻っていく。

そんな流れをつくりたいのです。

つまり、目指しているのは、

答えをもらうためのAIではなく、考え直すためのAI。

この違いを、今回の実践では大切にしたいと思っています。



まずは自分で作って、実際に試してみた

とはいえ、最初から完璧なGemを作れたわけではありません。

「こういうものを作りたい」

というイメージはありました。

でも、それをどういう指示にすればAIが理解してくれるのかは、実際に試してみないと分かりません。

そこで、ここでもGeminiに相談しました。

「子どもが答えを求めてきたとき、すぐに答えを出さず、考えるための質問を返すGemを作りたい」

そんなイメージを伝えながら、プロンプトを少しずつ調整していきました。

作ってみる。

質問してみる。

返ってきた答えを見る。

「これはちょっと答えすぎかな」

「ここはいい感じ」

「もう少し子どもが考えられる質問にしたい」

そんなふうに試していきます。

すると、少しずつ、

「お、これなら使えそうかもしれない」

と思える返答が出てくるようになりました。

AIに何かを作ってもらうとき、最初から100点のものを目指す必要はないのかもしれません。

実際に使ってみて、違和感を見つける。

そこから修正する。

この繰り返し自体が、AIを使った実践の一部なのだと思います。



子どもに使わせる前に伝えたいこと

ただし、ここからが大切です。

自分で試してみることと、子どもに使ってもらうことは同じではありません。

特に学校では、利用するサービスやアカウントによって年齢条件や管理者による設定などを確認する必要があります。Googleの公式情報でも、学校用アカウントでGeminiを利用する場合は、組織の管理者による利用許可が必要とされています。また、教育向けのGeminiについては、学校管理下での利用を想定した仕組みが案内されています。

だからこそ、

「便利だから、明日から使ってみよう」

というわけにはいきません。

学校としての手続きや環境を確認する。

子どもたちに使い方を説明する。

どんな場面で使うのかを決める。

そして、実際に使った後の様子を振り返る。

こうした準備が必要です。

そして、もう一つ。

私は、AIの使い方を教える前に、AIとの付き合い方そのものを子どもたちと考える時間をつくりたいと思っています。



AIに任せるのではなく、自分で判断する

一番伝えたいのは、

「AIが言ったこと=正しい」ではない

ということです。

AIは便利ですが、常に正しいとは限りません。

Googleも、Geminiについて回答を確認するための「ダブルチェック」機能などを用意し、AIの回答をそのまま受け取るのではなく、情報を確認することを促しています。

だから、子どもたちにも実際に体験してもらいたいと思っています。

例えば、あえて間違いを含んだAIの回答を見せます。

そして、

「この答え、全部正しいかな?」

と問いかけます。

子どもたちと一緒に調べてみる。

「ここがおかしい」

「この部分は合っている」

と、一つずつ確かめていく。

その後で、

「実は、この文章はAIに作ってもらいました」

と伝える。

すると、AIに対する見方も少し変わるのではないでしょうか。

AIはすごい。

でも、AIに任せればいいわけではない。

最後に考えて、判断するのは自分。

この感覚を持っておくことが、これからのAI活用では大切なのではないでしょうか。



体育の授業から、小さく始める


今回の実践では、まず体育で試してみようと考えています。

大きな取り組みにするのではなく、できるところから小さく始めます。

授業で使っているGoogleサイトの中に、今回作ったGemを置いておきます。

子どもが困ったとき、

「ちょっとAIに相談してみようかな」

と思ったら使える。

ただし、全員が必ず使うわけではありません。

ここも大切にしたいところです。

AIを使うことそのものを目的にしてしまったら、本来の目的から離れてしまいます。

使うかどうかも、子ども自身が考える。


そして、使った場合には、

・今日は何を使ったか

・AIに相談してどう感じたか

・自分の考えはどう変わったか

といったことを振り返ってもらいます。


例えば、

「AIに聞いたけど、よく分からなかった」

という感想が出てもいい。

「友達に聞いたほうが分かりやすかった」

でもいい。

「AIに聞いたら、自分がどこで困っているのか分かった」

なら、それも大きな発見です。

重要なのは、

AIを使ったかどうかではなく、AIを使うことで学びがどう変わったか。

そこを見ていきたいと思っています。



完璧なAIを目指さない

今回のGemも、きっと最初から完璧ではありません。

想定していなかった質問をされるかもしれません。

子どもにとっては、質問の意味が分かりにくいかもしれません。

逆に、AIが考えさせようとしすぎて、

「結局、何をすればいいの?」

となる可能性もあります。

だから私は、最初から完璧なものを完成させようとは思っていません。


① 使ってみる

② 子どもの反応を見る

③ うまくいかなかったところを考える

④ Gemを修正する

⑤ もう一度使ってみる

このサイクルを繰り返していきたいと思っています。


むしろ、子どもたちにも、

「このAI、ここはちょっと使いにくいね」

「こんな質問をしてほしい」

という意見を出してもらえたら面白いと思っています。

先生が一人で完成させた道具を子どもに渡すのではなく、

子どもたちと一緒に、学びの道具として育てていく。

そんな実践にできたらと思っています。



先生の役割は「答えること」だけではない


AIが教室に入ってくると、

「先生の仕事がAIに置き換わるのでは?」

と考えることもあるかもしれません。

でも、今回の実践を考えていると、むしろ逆なのではないかと思うようになりました。

AIが答えを返せるようになるほど、

「その答えをどう扱うのか」

を考える人の役割が重要になります。

子どもが何に困っているのか。

なぜその質問をしたのか。

AIの回答をどう受け止めたのか。

友達との対話で何が変わったのか。

そこを見ることは、AIにはできません。

少なくとも、私はAIを先生の代わりにしたいわけではありません。

先生には、先生だからこそできることがあります。

友達には、友達だからこそできることがあります。

AIには、AIだからこそできることがあります。

それぞれのよさを組み合わせながら、子どもが自分に合った学び方を選べる環境をつくる。

そこに、これからの教師の役割の一つがあるのではないでしょうか。



子どもが「AIを使う」から「AIと学び方を考える」へ


今回のGemを作りながら、私自身も少し考え方が変わってきました。

最初は、

「子どもが使えるAIを作ってみよう」

というところから始まりました。

でも、今は、

「子どもがAIをどう使うかを考える経験そのものが、学びになるのではないか」

と思っています。

例えば、

「この質問では答えを教えすぎる」

「この聞き方なら自分で考えられる」

「AIに聞くより、友達に聞いたほうがいい」

「AIの答えは一度調べ直したほうがいい」

そんな判断を子ども自身ができるようになる。

そうなれば、AIは単なる便利な道具ではなくなります。

自分の学び方を考えるための道具になっていくのではないでしょうか。



まとめ

AIを子どもに使わせることが目的になってしまうと、

「AIに聞けば早い」

「AIに答えを出してもらえば簡単」

という方向に流れてしまうかもしれません。

だからこそ、今回の実践では、あえて「答えを教えないGem」を作りました。

目指しているのは、

子どもの代わりに考えるAIではなく、子どもがもう一度考えるためのAIです。

もちろん、実際に使ってみなければ分からないこともたくさんあります。

本当に子どもの思考を深められるのか。

質問は適切なのか。

AIを使うことで、逆に考えることをやめてしまわないか。

これから一つずつ確かめていきたいと思います。

そして、AIを使うかどうかを決めるのも、最後にAIの答えを信じるかどうかを決めるのも、子ども自身。

先生は、その判断を支える存在でありたいと思います。

AIが教室に入ってくる時代だからこそ、

「AIに何をさせるか」だけではなく、

「AIを使って、子どもに何を考えてほしいのか」

を私たち教師が考えておくことが大切なのではないでしょうか。

まずは、小さく始めてみます。

使ってみる。

子どもの姿を見る。

うまくいかなければ直す。

そして、また考える。

その先に、AIと子どもと教師が一緒につくる、新しい学びの形が見えてくるかもしれません。


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それでは、また次回の記事でお会いしましょう!


 
 
 

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