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AIで広がる特別支援教育の新しい視覚支援──Geminiを活用した「ピクトグラム付き教材」のつくり方と導入ポイント

はじめに

特別支援学級をはじめ、より多様な学びを支える教育現場では、「視覚支援による情報整理」が強く求められています。その代表が、行動や語彙の理解を助ける「ピクトグラム(絵記号)」です。しかし、教師が日々の忙しさの中で、すべての教材にピクトグラムを自作しようとすると、時間がいくらあっても足りません。

そこで注目されているのが、Geminiを活用してピクトグラムや教材構成を半自動で作成する「校務DX」です。

本記事では、

  • ピクトグラム付き教材とは何か

  • 特別支援教育でなぜ重要なのか

  • Geminiで何が効率化できるのか

  • 実際にどう導入するかを、具体的な例や実践アイデアを交えながら整理します。

記事後半には、そのまま使える表・写真や動画の挿入案・プロンプト例も収録しています。明日からの教材づくりにすぐ役立ちます。

目次

  1. はじめに

  2. ピクトグラム付き教材とは?視覚支援としての役割

  3. ピクトグラム付き教材の例

  4. 特別支援教育で求められる視覚支援と合理的配慮

  5. Geminiでできる3つの支援

  6. ① ピクトグラム画像そのものの生成

  7. 生成できる例

  8. プロンプト例

  9. ② 教材の構成案とステップ分解(テキスト生成)

  10. 例:給食の配膳手順

  11. Geminiが生成した例:

  12. ステップ2:ピクトグラムに添える「短い言葉」の提案

  13. ステップ3:具体的な教材化のアイデア(先生の活用法)

  14. ③ Pythonコードなどによる教材生成の自動化

  15. コード例(時計の画像を生成)

  16. 具体的な活用シーンまとめ(特別支援学級)

  17. 校内紹介用事例:Geminiで「雑巾がけ」の手順書を作るケース

  18. 導入時の注意点と成功のコツ

  19. 1. デザインを統一する

  20. 2. 実物の写真のほうが分かりやすいケースもある

  21. 3. スモールステップの粒度の調整が必要

  22. 細かくしすぎると逆に混乱する子もいる。児童の特性に合わせて調整すること。

  23. 4. 一つの教材で「求める行動」を明確にする

  24. まとめ:AI活用は「先生の負担軽減」と「子どもの安心」の両立に

  25. 巻末付録:ピクトグラム教材づくりのためのプロンプト案集

  26. 1. 調理実習の手順書(スモールステップ版)

  27. 2. 生活カード(掃除・身支度・気持ちカードなど)

  28. 3. 行事のしおり(遠足・校外学習)

  29. 4. 交流学級の持ち物チェック

  30. さらに精度を上げるためのコツ

ピクトグラム付き教材とは?視覚支援としての役割

ピクトグラムとは、言葉を使わず形そのもので意味を伝える図記号のことです。例:非常口マーク、トイレの人型マークなど。

教育現場では、以下のような効果が期待されます。

  • 文字が苦手でも「何をすればいいか」が一目で分かる

  • 注意がそれやすい場面でも視覚で“次の行動”を思い出せる

  • 語彙理解の補助として機能する

  • 授業の見通しが立ち、不安が軽減する

特に特別支援学級では、視覚的な情報提示は合理的配慮として重要です。

ピクトグラム付き教材の例

  • 学習プリント:指示の横に「書く」「切る」「色を塗る」のアイコン

  • 手順カード:給食・掃除・生活動作を“スモールステップ”化

  • 感情カード:怒る、困る、疲れる、助けてほしい

  • スケジュール表:朝の会 → 1時間目 → 休み時間 → 帰りの会

このような教材は、理解のしづらさを抱えた児童に 「道しるべ」 を提供します。

特別支援教育で求められる視覚支援と合理的配慮

特別支援教育のガイドラインでも、視覚提示による構造化は重要な支援として示されています。

視覚支援が必要な子どもには次のような特徴があります。

  • 音声だけの指示だと理解が追いつかない

  • 注意が散漫になりやすい

  • 語彙理解に時間がかかる

  • 行動の見通しがないと不安になる

視覚提示は、「行動の予測可能性」「自己調整」「学習参加のしやすさ」を支え、学校生活全体の安定につながります。

Geminiでできる3つの支援

Geminiは、ピクトグラム教材づくりの大きな負担を減らします。大きく次の3つに分類できます。

① ピクトグラム画像そのものの生成

既存の素材にない「学校固有の場面」を作れるのが強みです。

生成できる例

  • 「廊下を走らない(禁止マークつき)」

  • 「給食当番の身支度」

  • 「水筒をカゴに入れる」

  • 「プリントを見せてほしいときのジェスチャー」

  • 「困った気持ち」「助けてほしい」

プロンプト例

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② 教材の構成案とステップ分解(テキスト生成)

ピクトグラムづくりで最も時間がかかるのは、「どの行動を“絵にするか”整理する作業」です。

Geminiは、作業をスモールステップに分解して提案できます。

例:給食の配膳手順

Geminiが生成した例:

  1. ステップ1:Geminiによるピクトグラム画像の生成

特別支援教育で使いやすいよう、「シンプル」「フラットデザイン」「背景白」「一貫したスタイル」で、配膳の主要な工程を示すピクトグラムを生成しました。

生成したピクトグラム素材

1. 身支度(エプロン・マスク・帽子) 配膳を始める前の準備段階です。「これから給食が始まる」という合図になります。

2. お盆を持つ 配膳のスタート地点です。空のお盆を両手でしっかり持つ動作を示します。

3. 食器・食べ物をのせる(受け取る) 給食当番や先生から、ごはん、汁物、おかず、牛乳などを受け取って、お盆の決められた位置に置く動作です。

4. 席まで運ぶ こぼさないように注意して、自分の席まで歩く動作です。

ステップ2:ピクトグラムに添える「短い言葉」の提案

ピクトグラムだけでは伝わりにくい場合、短い言葉(ひらがな、簡潔な動詞)を添えるのが効果的です。Geminiは、子どもに伝わりやすい言葉選びもサポートします。

  • 画像1(身支度)用:

    • 「エプロンを きる」

    • 「じゅんび」

  • 画像2(お盆)用:

    • 「おぼんを もつ」

    • 「りょうてで もつ」

  • 画像3(受け取る)用:

    • 「のせる」

    • 「ゆっくり おく」

  • 画像4(運ぶ)用:

    • 「せきへ いく」

    • 「そっと あるく」

ステップ3:具体的な教材化のアイデア(先生の活用法)

Geminiで生成した上記の素材(画像と文字)を使い、先生方は以下のような教材を作成できます。

A. 手順ボード(マグネット式)

  • 作り方: 生成した画像を印刷し、ラミネート加工して裏にマグネットを貼ります。ホワイトボードに順番に並べます。

  • 使い方: 子どもが工程を一つ終えるごとに、そのピクトグラムを「完了ボックス」に移したり、裏返したりして、「どこまで進んだか」「次は何か」を明確にします。

B. 個別用「おぼんシート」(ランチョンマット型)

  • 作り方: お盆の実物大の紙に、食器を置く位置を示す丸を描きます。その丸の中に、Geminiで生成した「食器」のピクトグラム(※追加生成可能)や写真を貼り付けます。

  • 使い方: 視覚的な手がかりが弱い子に対し、「この絵の場所に、同じお皿を置いてね」とマッチングさせることで、正しい配置を支援します。

    • (※「ごはん茶碗」「牛乳パック」など特定のアイテムのピクトグラムも、ご要望があれば追加で生成できます)

C. 動画マニュアルのスライド素材

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  • 作り方: タブレットなどで見せるスライドショーの素材として利用します。

  • 使い方: 「まずは準備です(画像1を表示)」「次にお盆を持ちます(画像2を表示)」の

    ように、音声とセットで提示し、活動前の予習に使います。

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③ Pythonコードなどによる教材生成の自動化

より高度な校務DXとして、Gemini上でコードを実行し、以下のような教材を自動生成できます。

  • 時間割のテンプレート

  • 手順書のPDF

  • アナログ時計のピクト(任意の時刻指定で生成)

コード例(時計の画像を生成)

import matplotlib.pyplot as plt
import numpy as np

fig, ax = plt.subplots(figsize=(3,3))
ax.plot([0,0.7],[0,0.7])  # 短針
ax.plot([0,0.9],[0,-0.4]) # 長針
ax.set_xlim(-1,1)
ax.set_ylim(-1,1)
ax.set_axis_off()
plt.savefig("clock.png")
Python図をnanobananaで出力
Python図をnanobananaで出力

具体的な活用シーンまとめ(特別支援学級)

以下は、現場での活用を想定した表です。


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校内紹介用事例:Geminiで「雑巾がけ」の手順書を作るケース

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〈教師の課題〉雑巾がけの手順が覚えられず、毎回指示が必要な児童がいた。と言う想定

〈Geminiに依頼する内容〉

  • 雑巾がけの手順をスモールステップ化

  • 各手順に必要なピクトの説明

  • 子ども向けの短い言葉づかい

〈Geminiに生成してもらう案〉

  1. ぬらす(蛇口と水のアイコン)

  2. しぼる(手でぎゅっと絞るアイコン)

  3. ふく(床を拭くアイコン)

  4. あらう(汚れた雑巾をすすぐアイコン)

  5. ほす(洗濯ばさみで干すアイコン)

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教師はこの案をもとに、必要なピクトグラムを生成してプリント化。

〈予想される結果〉

  • 子どもが「次の動き」を自分で確認するようになる

  • 注意喚起の声かけが減り、教員の負担が軽減

  • 活動に対する不安も減り、取り組みが安定

Gemini活用のメリットが伝わりやすい事例として校内周知がしやすいものです。

導入時の注意点と成功のコツ

1. デザインを統一する

AIは毎回タッチが変わるため、「線画・黒一色・フラットデザイン」など条件を固定すると良い。

2. 実物の写真のほうが分かりやすいケースもある

学校独自の用具などは、写真カード化したほうが伝わりやすい。

3. スモールステップの粒度の調整が必要

細かくしすぎると逆に混乱する子もいる。児童の特性に合わせて調整すること。

4. 一つの教材で「求める行動」を明確にする

ピクトが多すぎると焦点がぼやける。1枚につき1行動を基本にする。

まとめ:AI活用は「先生の負担軽減」と「子どもの安心」の両立に

ピクトグラム付き教材は、特別支援学級だけでなく、通常学級の合理的配慮としても活躍します。そこにGeminiを組み合わせることで、

  • 教員の作業時間を削減

  • 教材の質を一定に保ち

  • 子どもの理解を助け

  • 学習や活動への安心感を支える

といった効果が期待できます。

視覚支援=特別な支援ではなく、「誰にとっても分かりやすい授業デザイン」という考え方が広がっており、Geminiはその実現を強く後押しします。

巻末付録:ピクトグラム教材づくりのためのプロンプト案集

以下のプロンプトは、画像生成・構成案づくり・文章提案のいずれにも応用できます。

1. 調理実習の手順書(スモールステップ版)

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小学校の調理実習「野菜炒め」の手順書を作りたいです。

1. 工程をスモールステップに分解
2. 各ステップに必要なピクトグラム案(どんな構図・形がよいか)
3. 子ども向けの短い指示文(ひらがな中心・10字以内)
4. 掲示物に使えるレイアウト案(1ページに収まる構成)

2. 生活カード(掃除・身支度・気持ちカードなど)

生活場面で使う「生活カード」を作成します。


以下を作ってください。  
1. 生活行動のカテゴリー(掃除・着替え・荷物整理・気持ちなど)  
2. 各カテゴリーごとに5つの行動  
3. 行動ごとのピクトグラム案(構図・線の太さ・形状)  
4. 子ども向けの短い言葉(ひらがな中心)  

3. 行事のしおり(遠足・校外学習)

移動や集団行動のルールを示すものが中心です。楽しそうな雰囲気も少しプラスすると意欲につながります。

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小学校の遠足で配布する「行事のしおり」に使うピクトグラムを作りたいです。背景は白です。

・バス移動,スクールバスに乗っている子どもたちのイラスト。窓から顔が見える。楽しそうな雰囲気。
・並んで歩く,2列に並んで歩いている子どもたちのイラスト。帽子をかぶっている。列を乱さない。
・お弁当,お弁当箱を開けて食べようとしているイラスト。おにぎりと水筒がある。
・集合,先生の周りに子どもたちが集まっているイラスト。集合の合図。

4. 交流学級の持ち物チェック

「忘れてはいけない物」そのものを強調するため、人物を描かず「物単体」のアイコンにするのがコツです。

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 持ち物チェック用のピクトグラムを作成してください。
人物は描かず物だけで描いてください。背景は白でお願いします。

さらに精度を上げるためのコツ

  1. うまくいかない時は「英語」で補足:

    1. Geminiは日本語も理解しますが、デザインの微妙なニュアンスは英語の方が伝わりやすいことがあります。もし思い通りの絵が出ないときは、プロンプトの最後に (Simple vector art, iconic style) と付け加えてみてください。

  2. 色を指定する:

    1. 特別支援教育では「色」によるグルーピング(例:国語は赤、算数は青)も有効です。

    2. プロンプト例:「教科書のイラスト。表紙は赤色。ピクトグラム...」

  3. 「何をしないか」を指定する:

    1. 不要な背景や文字が勝手に入ってしまう場合は、プロンプトに「文字なし (no text)」「影なし (no shadow)」と追加してください。


今回はこれで終わりです。次回もお楽しみに!

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