AIが支えるIEP(個別教育計画)作成 ― プロフィールシートから始める支援のDX化
- 自習ノート2
- 4 時間前
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はじめに
特別な支援を必要とする児童生徒に対し、一人ひとりの学びと成長を支える個別教育計画(IEP:Individualized Education Program)は、教育現場で欠かせないツールです。
しかし、実際の現場では「時間が足りない」「情報が散在している」「書式が複雑」といった課題も多く聞かれます。
こうした背景から、教育の現場でもAIを活用したIEP作成支援が注目を集めています。
本記事では、ChatGPTなどを活用して開発された「IEP作成支援GPT」の実例をもとに、プロフィールシートを中心としたAI支援型IEP作成の流れを紹介します。
さらに、福岡県教育委員会が公表している「合理的配慮対応版」様式(PDF)をもとに、最新の実践動向を解説します。
目次
1. IEPとは? その目的と構成
IEP(個別教育計画)とは、障がいや発達特性を持つ児童生徒が学校生活の中で自分らしく成長するための指導・支援方針を明文化した計画書です。文部科学省による全国標準版では、次の4つの構成を持ちます。
IEPの目的は、チーム支援の共有ツールとして「誰が・何を・どのように支援するか」を明確化することにあります。


2. 福岡県の最新様式と「合理的配慮対応版」
福岡県教育委員会が提供する「個別の教育支援計画(合理的配慮対応版)」は、全国の自治体の中でも先進的な構成を持っています。
この様式は「ふくおか就学サポートノート」と連動しており、保護者・学校・医療機関間の情報共有を一体化できるのが特徴です。https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/778564_62557589_misc.pdf
主なポイント
合理的配慮の3観点11項目(教育内容・支援体制・施設設備)を明記
「引き継ぎシートA~C」で幼小中高の連続支援を実現
「指導の方針」欄では、将来像・目指す姿・合理的配慮・連携機関を一元記録
校内委員会による共通理解・合意形成を明文化
保護者との情報交換を前提とした確認印の欄を設け、協働の仕組みを構築
この構成は、インクルーシブ教育を推進するための「チーム学校」体制のモデルとされています。
3. ChatGPTを活用したIEP作成支援の仕組み
今回、AIを活用したIEP作成支援GPT(特別支援教育支援用)を作成しました。プロフィールシート、サポートシート、コンテンツサポート、評価が作成出来るGPTです。
このGPTでは、入力者が児童の個人情報を直接入力する代わりに、児童をID化してプライバシー保護に配慮するように設計しています。
💡入力の流れ
教師が児童を「ID7」などで登録
以下の項目を質問形式で入力 - 学年・クラス - 協働学習の課題 - 障がいの種類 - 医療・福祉との連携
GPTが自動整形し、文部科学省フォーマット準拠のプロフィールシートを生成
出力例
個別教育計画:プロフィールシート(ID7)
学年・クラス:2年1組 障がいの種類:自閉スペクトラム症(ASD)
得意分野:ピアノ演奏 保護者希望:見守り中心の支援 医療機関
連携:小児科医との情報共有
このように、教師はわずか5分で公式様式に沿ったIEPの下書きを作成できます。従来の紙ベースで数時間かかっていた作業を、AIによって大幅に効率化できる点が最大の利点です。
4. プロフィールシート作成の実例(ID化による安全運用)
実際に「IEP作成支援GPT」を使用して作られた事例を紹介します。
事例:2年1組・ID7の児童

このように、個人を特定せずにID管理することで、個人情報保護法や校内情報管理規定にも適合します。また、AIは項目間の整合性を自動でチェックし、入力漏れや矛盾を減らす機能を備えています。
5. e-IEP・クラウド連携型IEPの広がり
近年では、紙のIEPからクラウド共有型「e-IEP」への移行が進んでいます。日本支援教育実践学会が開発したe-IEPシステムでは、以下のような利点があります。
オンライン同時編集:担任・特別支援コーディネーター・保護者がリアルタイムに更新
医療・福祉機関との情報共有:クラウド上で安全に履歴管理
自動引継ぎ機能:次年度の計画書を過去データから自動下書き生成
特に、福岡県や熊本県では、Word様式+クラウド対応型フォームを導入しており、現場の効率化が大きく進んでいます。今後は、学校のGIGA端末(Chromebook)とも連携し、Googleフォームやスプレッドシート連動IEPの普及が見込まれています。
6. 今後の展望とAIによる教育DXの可能性
AIの導入によって、IEP作成は「記録業務」から「教育支援設計」へと進化しつつあります。たとえばChatGPTを活用すると、以下のような新たな支援も可能になります。
自動サジェスト機能:児童の特性に応じた支援案(例:「視覚支援カードを使用」など)を自動提案
学期末評価の要約生成:教員が記録した日誌をもとに、IEPの「評価・振り返り」を自動作成
合理的配慮項目のコード付与による全国統一データ化
保護者面談用PDF生成:AIが分かりやすい説明書式に変換
こうしたAI連携は、教育現場の働き方改革にもつながります。教師が「書く時間」を減らし、「支援する時間」を増やすためのDX化が、今まさに進行中です。
7. まとめ
個別教育計画(IEP)は、単なる書類ではなく、子ども一人ひとりの学びの地図です。AIを活用することで、その作成・共有・評価のプロセスが効率化され、より多くの時間を児童との関わりに使えるようになります。
これからのIEPは、「書くための計画」から「共に支える計画」へ。教師・保護者・医療・福祉、そしてAIが連携することで、真のインクルーシブ教育の実現が近づいています。
🗂️ 参考資料
文部科学省「個別の教育支援計画作成の手引き」
福岡県教育委員会「個別の教育支援計画(合理的配慮対応版)」
日本支援教育実践学会 e-IEPプロジェクト
今回はこれで終わりです。
次回もお楽しみに!
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それでは、また次回の記事でお会いしましょう!






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